健康診断の心得

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産業医・リハ医のヤマコーです。個人のFacebookはこちら

先日はストレスチェックについての記事を書きました。今回は健康診断についてです。

もくじ

  1. 健康診断の概要と法的要請
  2. 社員の健康は会社の問題
  3. 状況に基づいた対応をとることが重要

 

 

健康診断の概要と法的要請

ストレスチェックが義務化したのは2015年ですが、健康診断はずっと歴史が古く、1912年の工場法からの制度といわれています。

健康診断の歴史:

  • 1912年 工場法:感染症予防がターゲット
  • 1972年 労働安全衛生法 レントゲンや喀痰検査が導入
  • 1989年 貧血、肝機能、血中脂質、心電図検査などが追加
  • 1998年 コレステロール、血糖追加…生活習慣病(当時は「成人病」)フォローの強化
  • 2008年 特定健診の開始

「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行なわなければならない」と労働安全衛生法・第66条に定めがあるように、業種や従業員数によらず健康診断の実施は必要です(罰則規定もあります!)。

一方、従業員側からすると「面倒だな」「忙しいのに」「結果を見たくない」などネガティブな感覚も持ちがちなイベントかもしれませんが、健康診断を受ける義務は社員の側にもあるのです。同法第66条5項・7項にそれぞれ「事業者が行なう健康診断を受けなければならない」「健康診断の結果及び前項の規定による保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする」との規定があります。

 

社員の健康は会社の問題

もちろん、今回の趣旨は義務だから健康診断はやらないと…というものではありません。

言うまでもないことですが、就労は生活の大きな部分を占めており、その環境や内容は個人の健康に影響しうるものです。何か健康上の問題があるときに「環境を変えることで問題が消失・軽減されるかも」と考えることは自然な発想と思いますが、環境を個人で変えることは困難な場合が多いものです。また、生活習慣の改善は継続できないと結果につながらないものです(そもそも「習慣」って継続するものを指しますよね)が、それが難しいというのはよく知られたことです。誰かに言われたり、見られたりしているからうまくいく、ということも(理想とは異なるとしても)実際には結構あるわけで、一人では達成できない、失敗してしまう…かもしれません。従って、対応が組織的に行われるとよい…というのは、成果にこだわった際には妥当な要請です。

また、会社からしても、健康診断の価値は十分にあります。心身のトラブルを放置するとどうなるか考えてみると…

  • 不調 > パフォーマンス低下、作業ミス増加
  • 病欠 > 受注機会損失、プロジェクト頓挫、周囲の負担増等
  • 退職 > 採用・教育コスト、風評低下→採用困難、and more?

個人の健康が会社全体の成果にも影響することを考えれば、放置して良いという判断は(道義的な面をさしおいても)無いのではないでしょうか。少なくとも、経営上の検討に値するはずです。

会社の業績は基本的に社員ありきで成り立ちます(だから雇用するわけです)。その社員が欠けたら、会社としては機能を失うことに等しい。そうした事態が生じる原因として「心身の健康」は無視できないと考えます。

離職率の統計

平成27年度の厚生労働省統計では、全職種の平均離職率は15%程度とされています。情報通信業に限っては10%と比較的低めです。そのうち「死亡・傷病」と明記されているのが1.7%、40代以上で増えていくようです。不慮の事故等も含まれるでしょうが、「個人の事情」とされるものにもある程度は心身不調関係の理由が含まれていると考えれば、少なく見積もっても年間で0.2-0.3%程度の社員が健康上の自由で職場を去っているということになります。

 

状況に基づいた対応をとることが重要

ストレスチェック関連でも同様のことを書いているのですが、健康診断の意義は「心身の情報収集=就労を含めた生活の効果測定」であり、「行動変容や環境調整の検討材料」であると考えます。法的な要請としては就労が継続可能かどうかの判定が必要ですが、疾病予防にも役立つということは誰しも理解できるのではないでしょうか。

  • 1次予防:前疾病段階での生活習慣の評価
  • 2次予防:潜在疾病の早期発見

ただ当然ですが、状況がわかったから病気がなくなる、病気になりにくくなるわけではないですね。きちんと対応を取る必要があります。狙いが妥当で、実効的な方法で、適切に実施されること。そこで重要なのは「専門知識」「組織についての理解」「当事者(従業員)の認識」「経営層の支援」が必要です。まさに衛生委員会と産業医の出番、となるわけです。

 

以上、健康診断についての心得をお話しました。健康診断は業績に関与するヘルスケア・マネジメントのPDCAの基本だ、というのが私たちの考え方です。

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