店子の生き残り戦略・健康経営編

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産業医・リハ医のヤマコーです。個人のFacebookはこちら

今回はベンチャー企業の多くに当てはまるであろう、オフィスビルへの入居者としての振る舞いについての記事になります。自社ビルとテナントの違いは一軒家とマンションの違いのようなものですが、同じ建物中に別の企業・別の集団がいるということを意味します。集団生活には集団生活のマナー、それから知っていると得をするする情報・考え方というものもあるわけで、そこについて今回は考えたいと思います。

もくじ

  1. 雑居であることのリスクを減らそう
  2. 雑居のメリットを活かせ!

雑居であることのリスクを減らそう

産業医の仕事は書類さばきと面談、それにオフィスの中の環境を整えること…という考えを持っている方もおられると思います。もちろんそれも重要なのですが、オフィスの中だけのことを考えていては、成果は上がりにくいと感じています。例えば生活習慣病の改善プロジェクトを立ち上げたとして、社内のおやつを見直しました、だけでは十分な成果は上がらなさそうですよね。飲み会や自宅での食事についてコメントしたり、近くのランチスポットのメニューについて考えたり、オフィスの外にも目を向けて、きちんとシナジーの効いた施策にしていく必要があると思います。

まず幾つか、店子として抱えてしまうリスクを考えてみます。

感染症リスク

オフィスビルのテナントとして入居している企業であれば、必ず持っておくべき視点だと思います。例えば夏場の食中毒対策。例えば冬場のインフルエンザ予防。せっかく会社の中では対策を取ったとしても、それが水泡に帰してしまうことはあり得るのです。社内のドアノブすべてを消毒しても、トイレに行ったことでで病原菌ゲット。1階のコンビニで盛大に咳をしている人が居たら。すし詰めのエレベーターでは逃げ場がありません。

「同じ釜の飯を食った」仲ならぬ、「同じビルの店子」どうしの足を引っ張りあいは避けたいところです。もちろん行き帰りの電車なども含めれば特に空気感染のリスクとなる箇所は無数にあるのですが、滞在時間が長い場所で密度の高い接触が想定される関係についてはケアが必要で、対策が可能なように思うのです。

受動喫煙リスク

時代は公共の場での禁煙に向かって動いていますが、共用の喫煙所があるビルもあるかと思います。私が顧問をさせていただいている企業では年齢構成が若いこともあり喫煙率はかなり低いところが多いのですが、中途入社の方などを中心に数名ずつはいらっしゃいます。そのような方たちにもお話をしていく中で禁煙を勧めているのですが、「喫煙所がある」というのはそうした方々の強い意志を挫く要因にもなっているようです(まあ結局路上やビルの裏に出てしまえば喫煙所がなくても据えちゃいますので、本質的には「吸う人がビル内にいる」ということが問題なのかも)。

生活習慣病リスク

コンビニで脂ぎったスナックが売っている、つい買ってしまう。よくあることですよね。たまには悪くない、という考え方もありますが、売っていなければ買わないものではないでしょうか。何故売っているのかというと、そういう商品が売れるからです。同じビルの他社がジャンキーな嗜好で溢れていたら、そのビルのコンビニは御用達ハイリスク商品で溢れてしまいます。

色々なリスクを挙げてみましたが、対策はどのようにすればよいのか?答はシンプルです。「みんなでやる」こと、これに尽きます

雑居のメリットを活かせ!

よくよく事例を当たってみれば、小さな企業でも、いや、だからこそ変わった給与体系を持っていたり、休暇や社員の活動支援についてのステキな制度を開発した組織の例には事欠きませんが、そういったところには人が集まり、業績が上がるようになっているのではないでしょうか。決して余裕があるから変わった制度を導入したのではないはずです。狙いがあっての施策のはず。「福利厚生」と総称されるこうしたファクターは、使い捨ての出費ではなく、有効に使っていくことで売上を増大させ、内部コストを削減することに貢献します。健康経営の施策も同じです。そのことを理解せずに、できるだけケチケチと…という発想で判断を下そうとする方がいらっしゃることは、実に嘆かわしい。健康経営は大企業の特権ではなく、ベンチャーだからこそ考えるべき「経営施策」なのです

さて、そうは言ってもベンチャーには困難が多い。

  • カネがない(留保がないうえ、小規模なので施策の単価が上がりがち)
  • ノウハウがない(経験がない)
  • ヒトがいない(担当が付けられない)

だがしかし、大企業にはできるのに…と諦めるのはまだ早い。なぜ大企業ではできるのか。上にあげたような要素を持っているから。では、ベンチャーも寄り合ってみてはどうでしょう?

感染症対策をブーストしよう

感染予防のキャンペーンを合同で張ってみてはどうでしょうか。廊下やトイレに注意喚起の張り紙をしたり、エレベーターホールに除菌スプレーを用意してみては。ビル管も巻き込むのがおすすめです。

また、インフルエンザなどの予防接種について、小さな企業だとクリニックが設けている人数の要件を満たせず出張接種の対象にならないケースもあります。ですがビル単位なら、この問題は解決。人数が増えて複数日程が組めれば、仕事の都合で受けられないという方も減らせるでしょう。

健康診断のオプションを増やそう

上の出張予防接種を合同で受ける、というような施策は健康診断でも有効です。受診日の選択肢が増えたり、追加検査のオプション導入が可能になったりするかもしれません。

禁煙キャンペーンを張ろう

皆でやめれば怖くない。もちろん一人で吸う人は一人でも吸うのですが、なんとなく群れちゃってもう一本…というようなことは減るのではないでしょうか。仲間がいるという連帯感がなくなると、辞められる方も居るのではないでしょうか。また禁煙教室のようなイベントも、対象者の数がある程度多ければ考えられるかもしれません。そうした経済性の観点からも、自社だけでなくビル全体でのキャンペーンというのは考慮に値すると思います。

コンビニの品揃えを変えよう

消費性向は店舗の品揃えに影響し、極端な場合には店舗の撤退やブランド変更などにも繋がります。ビル全体で女性が多ければオーガニック商品が増えたり、ナチュラル的な店になったりするのです。健康経営の施策で連帯を組むと、自然と社員が健康になる環境を作ることもできるのではないかと考えています。あるいはもっと踏み込んで「ウチら、今度から◯◯の対策を一緒にやることにしたので、お店にも協力していただけたらうれしいです。会社として、◯◯系の商品についてはプッシュしていきたいと思ってます!」と、Win−Winになるような提案をお店に直接持っていくなんていうのはどうでしょうか!?

ビル管と集団で渡り合おう

あまり想定したくはないのですが、ビル管理会社の対応が不十分・不誠実というケースも無くはありません。エアコンの効きが悪いと思うのですが…と言っても「そんなことはないです」「構造上の不可抗力」などという回答が来たり、いつまでも約束された改善策が施されなかったりというケースを見たことは、(多くはありませんが)経験としてあります。ですが、泣き寝入りするにはまだ早い。他のフロアではどうなのか?ビルの北側ウイングでは?と、他社の事例を聞いてみると、解決可能な可能性が高い問題については、「やっぱりなんとかなるのでは」と自信を持って言えるようになると思うのです。お土産話を持って交渉のテーブルに再度ついてみてはどうでしょう。また、交渉そのものを集団で行うのも考えられます。二枚舌三枚舌の対応はできなくなりますし、ノウハウの共有も強力な武器になるはずです。

挙げたのはあくまで例ですが、ノウハウ・資金・人員、これらの問題はすべて「集まって大企業のように振る舞う」ことでかなり解消されるはずです。成果が上がり始めればアピール次第で注目をあびることも可能かもしれません。ベンチャーであることを言い訳にする者は、ベンチャー経営の資格なし

リソースに限りのあるベンチャーだからこそ、知見の共有・あるいは集団化によるメリットの活用というものを真剣に考えて、労働環境を改善し、メンバーの健康を守り増進することに注目してほしいと考えます。大企業もベンチャーも関係なく、そこに働くのは同じ人間なのですから