成果を求めるなら成果に拘るな

投稿日:

産業医・リハ医のヤマコーです。個人のFacebookはこちら

健康経営においては行動変容が重要であることは言うまでもありません。もとより現状を変えようという営みは須らくPDCAが大事、健康だけでなく本業だってそうだろう!…とは思うのですが、こと健康管理に関しては、「個人が」「長期的に」取り組むことが必要であり、当然、働きかける側にも生活習慣についてのより本質的な理解が求められるものです。

 

もくじ

  1. 単発の成果は目的ではない
  2. というか成果が目的ではない
  3. 成果ではなく行動を褒めよ

…否定形の見出しである1や2のタイトルを見ても「何かしよう」ってなりませんよね。それに比べると、3は少し何かデキそうに思いませんか。今日はそういう話です。

単発の成果は目的ではない(単発でなく持続的な成果を目指そう)

健康経営においては、構成員のパフォーマンスを高め、離脱などによるコストを削減していくことがひとつの目標になります。ですが、経営ツールとして考えれば、施策に逐次コストがかかってくるのはあまり良い状況ではありません。目標としたいのは、「勝手に続けてくれる状況が、最小限のコストを投入すれば維持できること」ではないでしょうか。

例えば来年の健康診断では体重を1kg減らそう!とキャンペーンを張ってみたとして(いちど、この目標の是非は措いておきます)、再来年は?その次は?ということです。無理して減らした社員が多ければ、維持できずにリバウンド…ということも考えられますよね。一度達成した目標は無理せず維持できる…そんなことないよ!というのは営業の方などはいつも思っていることかもしれませんが、ほぼ自動化された収益源をお持ちの方も居ることでしょう。努力しないわけではないが、なるべくコストを掛けないで済むようにしたい。個人にしても組織にしてもそれは同じでしょう。

そもそも成果が目的ではない(健康改善を通して仕事や生活を充実させよう

我ながら、最初からこちらを言えよという気もしますが…体重や血糖値を減らすことは、健康を維持してパフォーマンスや生活の充実を図るための手段であって、目的ではありません。事業でも利益はあくまで手段のはずですが、それを見失って数字!数字!!となることが、いかに我々からやり甲斐を奪うことか。

まずビジョンの共有を!というのがマネジメントの考え方なわけですが、健康経営においても同じです。例えば、

  • 売上を上げるのは、利益を確保して「◯◯◯◯」という当社のビジョンを実現し、世の中を幸せにするためだ→体重を減らすのは、生活習慣病のリスクを回避して、楽しく過ごせる時間を増やすためだ

最低でもこのくらいの置き換え共有はしたいところです。ただビジョンを共有してメンバーの行動が変わるというのは、その価値をメンバーが心から認めたときにしか起きませんよね。健康経営においても、上の例で言えば「病気をしなければその分楽しく生きられる」のような部分について、メンバーが「たしかに、そのためなら今の小さなキルタイムを多少セーブしたり、面倒に感じる仕事の工夫を少しくらいしてみよう」とはならないのです。健康がいかにありがたいかを、ハラオチさせる必要があるのです。ただこれは別記事でも触れたように、お説教臭くなっては効果が薄い。目先の利益に結びつけることでブーストされるのです!

ここは社内研修など様々な場面を活用したいものですが(上の文脈上の極論としては、健康の話だと意識させずに聞く機会を作れるとベター!)、社内のメンバーと産業医が組んで実践していくことが必要なのではと思います。産業医の使い所は本来こういうところなんじゃないかな…

成果ではなく行動を褒めよ

教育経済学、行動経済学と呼ばれる分野の近年の研究では「努力を褒めましょう」という示唆が得られています。曰く、「テストで良い成績を取る」ことに報酬が与えられる場合、「どうしたらそれが成し得るのか」ということに示唆がなく、成績が良いうちはまだ良いとして、伸び悩むと途端に困る。それよりは「本を読め」「単語帳を消化しろ」など、行動そのものをプッシュするほうが、幾ばくかでも効果がありそうですよね(英語文献ですが、興味のある方はこちらをどうぞ)。

例えば「営業成績が素晴らしいね」という褒め言葉。その内容は大変結構なことですが、伸びやなんでいる新人には掛ける機会がないかもしれません。それより「アポの電話を1日に10件もしっかりかけているね」の方が伝えやすい言葉でしょう。もしアプローチの筋が悪いなら、「しっかり業界研究をして訪問先に合わせた提案を組んでみるといい」と具体的なアドバイスを与えることで成績改善に導ける可能性が出てきます。なぜ筋が悪かったのかも判ってくれば、自分で行動を変える力をつけてくれるかも(逆に対案も出さずに「契約をとにかく取れ!」で成果が上がると思っているなら、指導する気ゼロと思われても仕方ありません)。

同様に、「血糖値が下がりましたね」よりは「おやつを食べる日が減りましたね」「主食の量を半分に減らしてタンパク質で栄養を取っているようですね」「3週間続けられましたね」のほうが良いのではないかということです。こうした内容なら、こまめに、かつ状況に合わせてエンパワーメントしやすいですし。もちろんこうした行動だって努力や意識の「結果」でもありますが、行うことそのものを褒め、あるいはリワードを付けるというのが効果的な手法だと考えられます。