社会的サポートで持続的なストレス耐性をつくろう

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産業医・リハ医のヤマコーです。個人のFacebookはこちら

ラインケアの重要性が注目を浴びています。今回は、社会的なサポートの重要性について知見をご紹介します。

もくじ

  1. 社会的サポートの効果についての疫学的な知見
  2. 社会的サポートは物理的変化を生じ、ストレス耐性に寄与する?

社会的サポートの効果についての疫学的な知見

ストレスチェック(組織としてどう活用するかについてこちらで解説しています)では、「周囲のサポート」を定量的に評価することが勧められています。これは、職場環境や作業内容、身体的なダメージ状況と並んでこの「サポート」が重要だと考えられているからで、1998年に考案された「簡易版職業性ストレス調査票」でも「ソーシャルサポート尺度」として、上司・同僚・家族の支援が得られているかどうかを評価することが提案されています。この評価尺度でみたときに、上司のサポートが薄い場合には、労働時間が長くなることがうつ病の発症リスクと関連付けられるという研究結果も出ています。

また、社会的サポートは寿命に対して身体活動性や喫煙、肥満、高血圧などと同等の影響を持っているとも言われています。サポートが乏しい状態だと、心血管リスクが高くなるとの報告もあり、いわゆる精神科領域に留まらない話にもなっています。

社会的サポートは物理的変化を生じ、ストレス耐性に寄与する?

近年では、心にかかったストレスに対処する力、自らの精神を元に戻そうとする力を「レジリエンス resilience」と呼び、研究対象とされるようになりました。これは数値では量りにくい、非定型的な脳の能力と言えるかもしれません(他にどんなものがあるか?生産性への寄与は?など、別の機会に触れたいと思います)。これを高めるための手法が開発されれば、大きな社会的寄与があるでしょう。たとえば楽観的であること。前向きなマインドを持つことが脳に変化を及ぼした(情動や意思決定に関わる領域の活動が、ネガティブな発想をした時よりポジティブな発想をした時のほうが高まる)という基礎的な研究データもあります。これと並んで、社会的なサポートも効果が大きいと言われているのです。

ストレスへの抵抗が人体の中でどのように行われているかを説明する際、神経脳科学的なアプローチからは概ね、2つの切り口が挙げられます。一つは自律神経系による早い反応、もう一つは視床下部・下垂体からの経路を介したゆっくりした反応です。こうした経路の調整にも社会的サポートが影響し、結果的に高いサポートはレジリエンスを高めるという報告もなされています。さらに、うつ症状の現れやすさに関わる遺伝子の発現にすら影響がある、というデータもあります。データそのものは脳そのものとの直接の関係を示唆しているものではありませんが、結果的に生じている現象としては重要な意義があると考えられます。

結果的に、社会的サポートは、「ストレスに強い心身」をつくることに繋がり、持続的効果をもたらすと考えられるのです。

 

蛇足

サポートさえしていれば、無理をさせても平気ってわけじゃないですよ… 慮られていないというのは、相手にはわかるものです。